しばしば「おたくの会社は何をやってるかよく分からない」と言われます。

 

確かに野菜を売っていればウチは八百屋でんねん!あるいは寿司を握っていればウチは寿司屋でおま!と明快に言うことができますが、当社の事業はなかなか一言で言い表すことができません。

 

 

webもやれば出版もやるし、テレビ番組の制作支援もするし、輸入&物販&飲食もやるし、アプリもやるという、「お前らなに屋さんやねん!」という珍妙な会社でございます。「なに屋さんやねん!」という問いに敢えて答えるなら、当社は社名に「メディア」とある通り、「メディア屋」でございます。

わたくし自身テレビ局の出身なので、メディアしか売った事がございません。このメディアなるもの、なかなかつかみどころがなく、新入社員への説明にも苦心するところです。なにせメディア(媒体)あるいは広告というものは野菜や寿司と違って、空気のように実態があって無いようなものです。以下は、ぼくがいつも社員に解説している「メディア屋の作法」というべきものです。

 

 

1.人さえ集められれば何とでもなる

ぼくの実家である奈良の田舎駅の看板広告と、渋谷ハチ公口の看板広告の値段は天と地ほど違います。なぜでしょうか?それは言うまでもなく、見る人の数が違うからです。メディア屋の矜持とも言える最も大事な仕事は、一人でも多くの人をそのメディアに集める事です。逆に言えば人さえ集められればもう9割がた勝ったようなもので、そこにいる人に物を売るなり、スポンサーに広告を売るなり、どんなビジネスでも出来るのです。

当社は今年、台北の繁華街にアンテナショップを出しました。正直、家賃は下手すると渋谷や新宿より高いエリアです。そんなべらぼうに地価の高いエリアで雑貨を売ろうがコーヒーを出そうが、絶対にペイしません。実際家賃が高すぎて、ぼくらが入居した時の両隣の店はもういなくなりました。では我々が何でそんなことをするかと言うと、そこが繁華街だからです。人さえ集まればそこがメディアになります。物を売るほかに店内ビジョンを広告主に販売したり、来店する人にアンケートを取ってクライアントのマーケティングデータを収集したり、企業や自治体に「店舗ジャック」として店でプロモーションしていただいたり。

オンラインであろうとオフラインであろうと、そこに人が回遊している限り、商売のやり方はいくらでもあると思っています。

 

 

2.メディア屋に求められる連立方程式

わたしが過去に働いていたテレビ局の偉い人がいつも言っていました。

 

「テレビ局には2種類のお客様がいらっしゃる。ひとつめは視聴者、もうひとつはスポンサー。この両方を満足させなければ、ビジネスは成立しない。」

まさにその通りだと思います。ぼくはこの金言を常に座右に起き、思い出さない日はありません。テレビ局の営業マンとして過ごした3年間では本当に多くのことを学びましたが、この言葉は最もいまに活きていると言って過言ではありません。

 

例えばスポンサーを満足させようと、一日中CMばかりを流していたら、視聴者は満足するでしょうか?間違いなくそんなチャンネルは見ないはずです。一方で、視聴者満足だけを追求して、CMを一切すっ飛ばして本編だけを流していたら、あっと言う間に会社が潰れてしまいます。

この二者を同時に満足させるバランス感覚が、メディア屋には求められます。

 

 

 

 

 

3.有料メディアは優良メディア

上で「視聴者とスポンサーを同時に満足させる」と言いました。しかしながらこれは「地上波TV=タダで観れる」を前提にした話です。NHKを除く地上波放送は、当然のことながら無料放送です。いっぽうCSなど専門チャンネルは有料である事が多いです。視聴者が「お金を払ってでも観たい」と思うメディアこそ最強のメディアであり、多くの人がお金を払ってくれるのであれば広告を掲載する必要はありません。

しかしながら、広告を一切掲載しないで回せる夢のようなメディアはそうそうありません(公共放送であるNHKを除いては一部の経済メディアと、エロ系くらい?)ましてや、web上では「情報=無料」が当たり前です。web上で「お金を払ってでも観たい」と思うコンテンツは、かなり希少です。例を挙げるなら「NHKオンデマンド」や「日経新聞」「パリーグTV」などでしょうか。これらはwebで多くの定期購読者を獲得しています。この事実は、良質なコンテンツであれば、たとえwebであってもユーザは「お金を払ってでも観る」という事の証左です。

我々のwebメディア「ラーチーゴー!日本」は、100%無料のwebメディアです。もしこれを有料にしたら…?ユーザが大激減する事は明らかです。台湾では「webの情報=無料」の意識が日本より強いですし…w

 

とはいえ、いつか台湾人・香港人ユーザが「お金を払ってでも観たい!」と思うような、有料webメディアを創ってみたいというのは、ぼくの夢です。今は観光情報メディアだけですが、経済メディアや留学・就職メディアも創ってみたいところです。

 

 

4. ユーザーファースト

 

2で視聴者とスポンサーの話をしましたが、ではもしこの両者の利害が真正面から衝突した場合、どうすべきでしょうか?

例えばウチの「ラーチーゴー!日本」に1億円という、巨額の広告出稿が舞い込んできたとします。しかしその商品は「身につけるだけで運気が上がり、金も女も思うがまま!」という水晶アクセサリー(エロ本の裏表紙によくあるやつ)だった場合、その広告を掲載することはユーザ(視聴者)にとって絶対に不利益なことです。

このように両者の利害が完全に正面から対立した場合は、迷いなくユーザ(視聴者)の利益を優先すべきです。なぜならスポンサーが離れても視聴者は離れませんが、視聴者が離れたらスポンサーは確実に離れるからです。

ぼくはテレビの営業時代、いろんなCMに携わりましたが、テレビCMと言えど全部が全部超有名スポンサーばかりではありません。中には健康食品やらマルチやら宗教やら政党やら、色んな企業・団体がCM出稿をします。ぼくは営業マンとして、そのような企業・団体の思いを酌んで、社内の”CMの番人”である考査部と闘っていました。考査部にも「視聴者のため」という正義があるし、営業マンであるぼくにも「スポンサーのため」という正義がありました。でも両者が真っ向から対立する場合(どう考えても視聴者の不利益になる場合)は、前者が優先されるべきですし、実際そうなりました。上述のように、スポンサーが離れても視聴者は離れませんが、視聴者が離れたらスポンサーは確実に離れるからです。

だからメディア屋は、目先の利益に惑わされてはならないのです。(この点、上場すると株主に毎期の売上・利益を約束せねばならなくなるので、ぼくはテレビ局などのメディア屋は、上場すべきではないと思っています。)

このユーザファーストの考えも、いまメディア運営に役立っている経験のひとつです。

 

5.誰に届けたいのか?

4のユーザファーストに絡む話ですが、ユーザに喜んでもらうためには、ユーザを知り、その人がどんな人で、どんなものに興味を持ち、どんな情報を欲しているかを正確に把握しなければなりません。昨今「多言語・訪日外国人メディア」が雨後の筍のようにポコポコ生まれていますが、「訪日外国人」というターゲティングはあまりにも粗いです。例えば欧米系と中華系では興味の対象や消費マインドも大きく違いますし、中華系の中でも中国・台湾・香港はそれぞれ違います。例えば中華系は欧米系ほどニンジャやスモウに惹かれませんし、台湾人は中国人みたいに家電や高級腕時計を爆買いしません。

我々は台湾に特化したメディアですが、「台湾」というターゲティングですら、もはや粗いと思っています。なぜなら今年台湾からの訪日客数は400万人を超える勢いです。人口がわずか2,300万人にもかかわらずです。これだけ多くの人が来られると言うことは、ニーズも明らかに多様化しています。例えばLCCで来る層とビジネスクラスで来る層では、それぞれのニーズは絶対に違います。

 

当社では、台湾からの訪日客を4つのレイヤーに分けています。

 

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↑社内向けに「さわり」を理解する用なんで、ざっくりすぎてすみません。

当社メディアがターゲットとしているメインの層は「C」、サブが「B」です。「A」と「D」はハナから対象から外しています。編集部には他にも「女性目線」、「若者目線」でのコンテンツ制作を徹底させています。

 

最低でもこれくらいはエッジを立てないと、情報は刺さらないと思っています。重ねて言いますが、日本人が作ったコンテンツを英語・中国語・韓国語・タイ語…など他言語化してべたーっと「訪日外国人向け」とするやり方は、ナンセンスです。

 

 

6. ソーシャルは活用する。でも依存しない。

 

ぼくが個人で始めたFacebookページは、いま53万人のファンを擁するまでになりました。

 

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「ラーチーゴー!日本」内で制作した記事をFacebookでシェアすると、瞬く間に拡散します。台湾・香港はFacebookの利用率が世界屈指の高さなので、記事がバズれば、とんでもないアクセスが集中することもままあります。

 

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↑台湾・香港あわせて人口3,000万そこらの中で、137万リーチはなかなかのもの。(あ、これ許可はとってますが広告ではありません。純粋にウチのライターが「台湾にローソンないから、ウケますよ!」つって書いただけです。)

しかしながら、これはFacebookの拡散力があればこそできることであって、もちろん有効に活用はしますが、ソーシャルに依存しすぎると、オウンドメディアが育ちません。最近はFacebookでのラーチーゴー!の記事投稿を徐々に減らし、ユーザとのコミュニケーションに注力しています。

その結果、Google Analyticsを見てもソーシャル経由での流入が、昔は6割を超えていたのが今は2割台まで低下しています。キーワード検索も減ってきました。Facebook経由じゃなくて「ラーチーゴー!を見たい」とダイレクトに流入してくれる人が増えている証左だと考えています。

 

長くなりました。メディア運営というのはやり方は本当にさまざまで、正解が一つではないだけに、難しいながらとても面白いと思います。いまの私のメディア運営の基礎となる知識と経験はすべて、古巣・朝日放送と広告代理店各社の先輩方に教えてもらいました。わずか3年ながら、本当に実りある時間でした。

 

日本で培った経験を大事に、また台湾・香港で励みます。

 

爆ぜる!!!

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プロフィール

代表取締役社長
吉田皓一
奈良県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。テレビ営業部で3年勤務したのち退職し、ジーリーメディアグループ創業。東京・台湾・香港を往復しつつ、細々と事業を展開しております。趣味は酒と飯です。車・ゴルフ・時計等一切興味なし、ただひたすらに美酒と美食を求めて日本全国を巡っています。

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