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韓国が、自国のコンテンツ育成とその輸出に成功しているのはよく知られるところですが、台湾の場合はどうでしょうか?日本にも「台流(華流)」やT-Pop/C-Pop好きのファン層があるにはありますが、一部の台湾好きが盛り上がっているだけで(←すみません…)、韓流の市場規模とは比べるべくもありません。なぜ台湾のコンテンツ産業は、大きく育たないのでしょうか?

 

 

テレビ番組の8割が再放送

台湾のテレビをみていると、とにかく再放送が多い事に気づきます。台湾現地の”電視頻道節目重播率調查“(テレビチャンネルの再放送比率調査)によると、新しい番組の比率は全体の2割〜3割にとどまり、残りの7〜8割は再放送である、という結果がレポートされています。日本の場合、新しくされた番組の比率が8割程度なので、その差は歴然です。じつは日本のテレビ局のなかにも、無理に新しい番組を流さず、過去の人気番組をどんどんリピートした方が利益は出る、という意見も根強くあります。日本のテレビ局がそれをしないのは、中長期的に見て、再放送頼みになると、肝心のコンテンツ制作力が失われてしまうからです。

 

 

お金がない!

 

台湾のテレビでリピートが多い理由はとてもシンプルで、お金がない、つまり自社制作でどんどん新しい番組をつくる制作費がないからです。台湾のエンタメ業界は本当にお金がありません。日本のゴールデン番組の制作費は、ひとときに比べて削減されたとはいえ、1本あたり2〜3千万円程度はあります。いっぽう、台湾は人気番組でもその1/10あるかどうか、セットもしょぼい、もといシンプルですし、CGなどのエフェクトも簡素です。また、4本撮り5本撮りも当たり前、NHKスペシャルや情熱大陸のように、何ヶ月も密着する番組はほとんどありません。社員の給料も、日本のテレビ局のように高給なわけでもありません。

 

では、なぜそんなにお金がないのでしょうか?TVのチャンネル数が約100と供給過剰な点も理由の一つかと思いますが、最も根本的な問題は、止まらない悪循環、言うなれば負のスパイラルに陥っている事があります。すなわち、制作費ない→優秀な人材が集まらない→良い番組がつくれない→広告が売れない→制作費がない…….という負のスパイラルです。

 

この負のスパイラルをなんとか止めねばなりません。関係機関も動き始めています。

 

 

広告の規制緩和

 

 

台湾のテレビ放送を監督管理するのは、NCC(National Communication Commission / 國家通訊傳播委員會)という組織です。日本でいうと、電波行政をつかさどる総務省みたいなもんでしょうか。このNCCもこの現状を座視しているわけではなく、すでにさまざまな施策を打ち出しています。

 

例えば、広告の規制緩和です。元来、台湾の放送運用は、日本に比べてとても厳しいことで知られていました。例えば、企業名や商品名を番組中で言うのは基本NG、本編と広告を明確に分けるという原則は、日本より厳格です(たぶん今も)。日本の場合このあたりが結構ユルく、本編の中に提供スポンサーの商品を仕込んだり、あるいは提供スポンサーの競合商品を完全排除したり(例:XXXビール提供番組では他社のあらゆる飲料は悉く排除、もし写り込んだら全力モザイク、等)というのはごく一般的ですし、本編の中でガッツリとスポンサー商品を紹介する、いわゆるパブリシティも普通に行われています。

 

これが台湾ですと一切NGとなります。台湾では基本的に全ての番組で、出演者が話した全ての内容にテロップが付くのですが、仮に出演者が「iPhone Xを買いました!」と発言しても、iPhoneは固有の商品名なので、テロップは「新型スマートフォンを買いました!」となります。私も色々な番組の仕込みをしてきましたが、「そこまで言いますか….」という厳格さには、よく泣かされています。

 

そんなNCCも、上述のとおり負のスパイラルを打開すべく、近年は新たな施策を打ち出しています。衝撃だったのが、2012年に打ち出された、「番組にスポンサーのカンムリOK」という規制緩和です。「日本生命 セ・パ交流戦」「サントリー 1万人の第九」的な感じでしょうか。

 

記念すべき規制緩和後初のカンムリは実は日本企業のカネボウでして、台湾のトーク番組「SS小燕之夜」にスポンサードし、「Kanebo SS小燕之夜」となりました。

 

 

 

↑オープニングからガッツリ、本編でもずっと露出し続けています。これは衝撃でした。

 

 

↑こちらは2016年に惜しまれながら終了した国民的バラエティ「康熙來了」、これも冒頭ガッツリと美容パックが露出されています。

 

ではこの広告の規制緩和によって、制作費不足問題が根本的に解決したかというと、当然問題はそんなにシンプルではありません。

 

無料モデルメディアの「連立方程式」

私自身、テレビ局で社会人としてのキャリアをスタートしてから今に至るまで、ずっと広告に関わってきたのですが、ひとつ間違いなく言えるのは、「(無料)メディアには、視聴者と広告主という二種類のお客様がいる」ということ、NHKのようにユーザから直接お金をもらえない限り、つまり無料放送である限りは、常に視聴者と広告主という二種類のお客様を同時に満足させる連立方程式を解き続けないと、そのメディアは死んでしまう、ということです。視聴者のほうばかりを気にしていると飯が食えませんし、広告主ばかりを見ていると、視聴者はソッポを向きます。

 

スポンサー収入を増やしたところで、肝心のコンテンツが視聴者を魅了しなければ、正のスパイラルは生まれませんし、広告収入の増加も一時的なもので終わってしまいます。本編にゴリゴリに広告主や商品名を差し込むのはノイズでしかありませんから、視聴者・広告主双方にとって幸せな状況だとは言えません。視聴者向けには、より面白く共感できて、SNSなどにアップしたくなるような広告が求められ、広告主向けには、単純なGRP販売ではなくどれだけ認知が広がったか?(究極的にはどれがけ売上につながったか?)に深く踏み込んだ広告が求められます。

 

 

 

 

人材の育成と流出阻止が最重要課題

 

自分自身が広告畑の人間なのでつい熱くなってしまいましたが、いま台湾のコンテンツ産業にもっとも重要なのは、広告もさることながら制作に関わる人材の育成と流出阻止です。

 

台湾は中国語圏の一部ですので、台湾コンテンツのマーケットは国内に止まらず、全中華圏に広がります。

 

チャンスが多いこと自体は望ましいことなのですが、逆を返せば”台湾国内でなくても稼げる“ということです。実際、台湾で売れた俳優やタレントは続々と中国や香港など、より高待遇な市場へ活躍を求めます。それは製作スタッフも同じでして、有能な監督やプロデューサー、ディレクターがどんどん国外流出しています。特に中国の場合は動くお金が桁違いですから、有能な人はどんどん中国を目指します。

 

役者が厚遇され、製作陣の労働環境が改善され、高い報酬が得られる仕組みづくりが求められています。

 

 

 

 

私も微力ながら貢献してまいります!!!

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プロフィール

代表取締役社長
吉田皓一
奈良県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。テレビ営業部で3年勤務したのち退職し、ジーリーメディアグループ創業。東京・台湾・香港を往復しつつ、細々と事業を展開しております。趣味は酒と飯です。車・ゴルフ・時計等一切興味なし、ただひたすらに美酒と美食を求めて日本全国を巡っています。

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