論語の有名な一節に「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」(これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)てのがあります。

要約すれば、「その物事を理解している人は、知識があるけれど、そのことを好きな人にはかなわない。その物事を好きな人は、それを楽しんでいる人には勝てない」という意味です。

「A. 知ってる人」「B. 好む人」「C. 楽しんでる人」、それぞれどう違うのでしょうか。

英語を勉強している日本人3人を例にとります。

Aさん:苦労して英語を猛勉強し、TOEICスコア満点を達成。

Bさん:アメリカの自由な雰囲気が好きで、アメリカ留学が夢。

Cさん:恋人がアメリカ人(めっちゃラブラブ)。

Aさんの場合、勉強は苦痛でしかありません。自分の欲求を押さえつけ、ひたすら耐え忍ぶことで、英語能力を高めた努力の人です。

Bさんは、アメリカが好きで、留学したいという夢もあります。でも、それはまだまだ先のこと。長く続く学習の過程では、つまづいたり壁にぶち当たったり、モチベーションが挫かれる日も沢山あります。

Cさんの場合は、勉強や努力をしている、といった実感は一切ありません。自分の好きな人ともっと話したい、そのひたむきなパッションは尽きることがありません。

 

この場合、Aさんは勉強=辛い事、耐え忍びながらなので、休憩したり、悩んだり、挫折したりする時間が多く発生しますし、何より自分が幸福ではありません。逆にCさんは(恋人との関係が円満である限りは)どれだけ勉強しても辛さより楽しさが勝るので、休憩や苦悩や挫折などなく、永遠かつノーストレスで英語を勉強することができます。

 

 

Aさんは現時点では英語能力は超高いですが、もしかしたら表現が教科書通りになりがちで、生きた表現に欠けるかもしれません。逆にCさんは今はまだ流暢にしゃべれないですが、英語の勉強が楽しいので習得スピードが圧倒的に速く、何より表現がみずみずしい。英語と言うのはコミュニケーションのツールの1つですが、Aさん、Cさんどちらの英語がよりネイティブの心を打つかといえば、Cさんだと言えます。

 

中国語で勉強(ミエン チアン)とは「無理強いする」という意味になります。勉強とは本来つらく苦しく、無理を強いられるものです。実際、勉強とは苦しいものだ、耐え難きを耐えるんだ、だからそれを頑張った人は尊敬に値するんだという固定概念があります。私は、この「耐え難きを耐えて知識を詰め込む」ことを尊ぶ意識は東洋、特に東アジアで非常に強く、その源流は中国の「科挙」にあると考えています。科挙とは中国において千年以上にわたり行われて来た官僚の登用試験、別名無間地獄です。

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↑科挙のカンペ(出典:Wikipedia)。古典の思想書などを何冊も丸暗記する地獄の試験。出世を望む限り、人生において何度も何度も続く。最難関のテスト「殿試」ともなれば、皇帝の前で試験が行われ、要求される知識量はテキストだけで128GBになるとか(適当)

日本の大学受験が暗記のオンパレードなのはよく知られたところですが、隣国の中国や韓国、台湾も詰め込み型が主流です。名門大学ですら、(一部を除き)知識を前提として自分の意見を書かせたり、考えさせたりといった問題が無く、膨大な知識の量を問う試験を課しています。西欧列強に蹂躙された清国が科挙の限界に気づき、同制度を廃止してから200年あまり、東アジアはいまだにその旧習から脱却できていないのかもしれません。

 

さて、私は別に教育評論家ではないので、ここで「欧米みたいに答えを考えさせる教育をしなければ!」とか、よくある教育論を展開したいわけではありません。私が言いたいのは「自分が楽しいと思える方法を見つければ、永遠に疲れない」という事です。上述の英語の例もそうですが、自分が楽しいと思えるシチュエーションを整備できれば、自分が永久機関になれるのです。

 

台湾で何度も目の当たりにした光景があります。語学研修生として訪台している日本人留学生の多くは、毎日授業に出て、図書館で自習して、一生懸命に中国語を勉強しています。一方、40代で初めて台湾に赴任したサラリーマンのおじさんの中には、授業や図書館になど一切行かずとも、語学研修生よりはるかに早いスピードで、中国語を習得する人がいます。毎日遅くまでスナックで飲んでいるだけなのに、半年間で中国語がベラベラになっているのです。それはなぜかといえば、そのおじさんは「スナックのオネエちゃんと中国語でしゃべりたい」という、唯一にして最強のモチベーションに突き動かされているからです。

 

語学研修生が、必死に「努力」という石炭をガンガン投入し、息せき切って前進する蒸気機関車だとしたら、台北のスナックにオキニがいるおじさんは、無尽蔵の動力を搭載した原子力潜水艦です。動力が半永久的なのです。

 

「知之者不如好之者、好之者不如楽之者」(これを知る者はこれを好む者に如かず。これを好む者はこれを楽しむ者に如かず)、これは、勉強だけでなく、仕事でも同じ事が言えると思います。

 

私はテレビ業界の出身ですが、今の時代、動画を大勢の人に広く発信できるのは、テレビ局の専売特許では無くなりました。Youtuberに代表されるような個人で制作する動画が圧倒的多数の人を魅力することは、少なくありません。仕事と思ってイヤイヤやっているプロと、好きだからノリノリでやっているアマチュアでは、後者の方が圧倒的に強い訴求力を持つのです

 

「だから好きなことを仕事にしよう!」という類の自己啓発本は多く出回っていますが、現実問題そんな事ができるのは一部の超人だけです。(私だって、酒が好きだからといって吉田類さんみたいになれるかと言われれば、超絶躊躇します。)

 

ただ、仕事の中に自分の好きな事を、1割でも2割でもつくってみる事はできると思います。例えばウチの会社では、熱烈な野球ファンの台湾人社員がおりまして、彼女にプロ野球関連の仕事を任せたら、プロジェクト終了までずっと高いモチベーションを維持したまま仕事をしてくれました。或いはコスメマニアの社員に化粧品に化粧品特集をお願いしたら、とんでもない感動巨編プレゼン資料が送られて来て、内心「ここまでせんでも…」と思ったものです。ですから、仕事を楽しむ第一歩として、自分の「好き」を仕事にできるよう、上司に掛け合ってみるのもよいとおもいます(それを頭ごなしに拒否されるなら辞めてしまえば良いだけです)或いは休日を使って自分の好きなことを、今流行りの副業にしてみるのもいいです。

 

苦しみに耐えながらの勉強や仕事も素晴らしいことですが、一番理想的なのは自分が楽しむこと。どうやったら自分が楽しいか?という環境を、自ら作り出す事です。

 

私は英語を楽しみながら勉強したいので、イビザ島に留学できないか真剣に検討しています。(まず無理ですが)

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プロフィール

代表取締役社長
吉田皓一
奈良県出身。慶應義塾大学経済学部卒業後、朝日放送入社。テレビ営業部で3年勤務したのち退職し、ジーリーメディアグループ創業。東京・台湾・香港を往復しつつ、細々と事業を展開しております。趣味は酒と飯です。車・ゴルフ・時計等一切興味なし、ただひたすらに美酒と美食を求めて日本全国を巡っています。

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